邦楽ポップスのある意味における頂点に立つ存在の、その楽曲作成力の膂力をまざまざと見せつける快作、ここにあり。槇原敬之のポップスはまだ死んではいなかった。
英詞を用いることによって、自らが作り出してきたメロディとトラックが「本物」であることを証明するために作られたツールないし主張そのものであるかのように受け止めることが出来た。
楽曲が有する世界観を演じ、それを歌うことは歌謡曲の特徴の一つなのだからして、演じることが職業である声優がそこに挑むのは極めて正解ではないかと。
歌そのものから、匂い立つような大人の雰囲気を醸し出すことが出来る歌手がいたと言う事実は間違いなくあって。そして、それら存在が歌謡曲という一ジャンルを形成していたのだろうと。大人による、多くの大人のために向けられた音楽、と言ったような。
音楽と言うツールを操ることができると、人は何者にでもなれるのだと、アルバムが終わった瞬間、頭の中をよぎった。上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテットによる作品は、優美でダンディーで、そして自由闊達なものとして自分の元に届けられた。ストリングスを…
いやはや。クールでいいなぁ。「素敵な歌声」と称するのともまた異なる、独特の冷たさ。表面から数センチのところまではひんやりとしていながら、質感は柔らかで、その奥にある体温がうっすらと間接的に滲み出てくるようなボーカル。トラックもこの声に合わ…
今となって聴いてみると、色んな見方が出来ますな。小室哲哉プロデュースの中でも、比較的異色な存在と言いますか、「TKファミリーの中には、いそうでいなかったような存在」とでも言いますか。いや、いたんですが。ファミリーの中の様々な存在に対するカウ…
SHAKKAZOMBIEと言う存在は、まぁ、まずヒップホップにカテゴライズされるのだろうけれども、非常に硬質なトラックに支えられた上質なポップミュージックのようにも思えるのであります。2MCの存在は唯一無二のものであり、1DJの存在ももちろん非常に大きなも…
当然の事のように入手。当然の事のようにぶっ続けで再生。そして、当然の事のように燃えたぎる。いい繋ぎをしております。これでもかこれでもかとたたみかけるMIXに、途中ゲラゲラと笑い出してしまったほど。個人的にリアルタイムで見ていたり、楽曲をよく知…
なんて爽やかな「ロンバケ」の世界!より夏っぽく、よりリゾートミュージックとして磨き上げられた世界観。これを素敵と言わずして何と言う。これほどまでにリッチな音世界を、またしても新たなリマスタ音源、それもSACDで楽しめるなんて。身と耳をどっぷり…
大人による大人のための、素敵と形容するにふさわしい作品。思い起こせば2年前。「倦怠感」と言う非常に曖昧な病名が書かれた診断書を会社に提出して、2ヶ月ほど床に伏せっていた時期があった。その時に唐突にJIMSAKUの存在を思い出し、それから間もなく旧作…
久しぶりにアルコールが美味しかった晩。ほろよいでゆっくりとこのBlu-rayを鑑賞した。アルバム『水響曲』における楽曲の生まれ変わらせ方は見事の一言。これをライヴで披露したのであれば、是非観たいと思っていた映像作品。そしてその期待を裏切ることなく…
自分でも面白いことに、このアルバムを聴くにはそれなりの体力と精神力を必要としていたのです。購入直後に聴いたものの、それ以降、何度再生させても、途中で挫折していたのです。気が鎮まりきっている時にはこのピアノソロアルバムは神経に障り、落ち着き…
70年代音楽、そして80年代&90年代音楽との間では、古典文学か現代文学かほどの差があると常々思っている。70年代楽曲「-1-」を鳥山雄司監修としたのに対して、この「-2-」では今のミュージシャンでバックを固めている、そのコンセプトの明確さがこのカヴァ…
やっぱり歌う女優さんだ。楽曲によっての表情のつけ方、変化が見事。どこか懐かしく甘酸っぱい70年代の雰囲気がよく現われており、歌としてしっかりとした味が出ている。アレンジは「壊す系」で来ましたね。そこはさすがの鳥山雄司先生。その壊す手綱を緩め…
タイトルの「Standard」とはいわゆる往年のスタンダードナンバーを指しているのではなく、「New」と冠しているように、現代のロック・ポップスのヒット曲や有名曲を、ピアニスト、ハービー・ハンコックをはじめ、錚々たるメンバーがジャズとして取り上げたア…
上原ひろみは果たしてジャズなのか。ジャズピアニストであると言えば確かにそうなのかもしれないが、では先の疑問に対しての答えになるかと問われると、どうにも腑に落ちないものがあり。ジャズなる器に収めるにしては、あまりにもその守備範囲が広いように…
クラシック音楽。夜中に聴きたくなるのはブルックナーかシベリウスであることが多いような気がしている。両者の持つその抽象性が、独り身の夜が持つ茫漠とした感覚に上手く入り込む、もしくは欠けたピースの中にはまるのかもしれない。また、貴重なる静かな…
このアルバムは30代の自分にとってのバイブルでもあり、また、今となっては己の人生の苦い部分が全て詰まっていると言っても過言ではない。感情のるつぼとしてのロックアルバムであり、怒りからアパシー、そして思耽、茫漠と言ったものまで、全8曲にぎっしり…
(自分の中では)言わずと知れた高田みち子の1st。このアルバムがリリースされた頃の音楽業界の風潮による恥ずかしさと言いますか何と言いますか、「日本のノラ・ジョーンズ」などと、外野から見ると非常に恥ずかしい称号を与えられてしまったことは、この方…
このアルバムは30代の自分にとってのバイブルでもあり、また、今となっては己の人生の苦い部分が全て詰まっていると言っても過言ではない。感情のるつぼとしてのロックアルバムであり、怒りからアパシー、そして思耽、茫漠と言ったものまで、全8曲にぎっしり…
ああ、ようやくか。GRAPEVINEがこれまでの全てのしがらみから解放された。完全に自分たちがやりたいようにやりたいことをやっていると、これでもかこれでもかと、展開される楽曲一つ一つに訴えかけてくる。瞬間最大風速的なGRAPEVINE病に罹っていた若かりし…
ジャン・ロンドーの新作。今回の作風、音色と言ってもいいかもしれないが、それはタイトルが表わしているような色の世界。それはどこか鬱々とした色彩でもあり、連綿と紡がれてきた音楽の歴史による恵みでもあり。ジャン・ロンドーはハープシコードの魔術師…
この企画ベストアルバムはおそらくリリースされた当時から手元にあるのだけれども、最後まで通して聴くことはあまりなかったような気がする。今になって聴いてみると、全盛期後期のロックサウンドを積極的に取り入れたその路線は、当時のバンドブームや女性…
ふとしたことからこのディスクの存在を知り、中古にて購入。既に絶版だったので。敬愛するゴーティエ・カピュソンによるドヴォルザーク。指揮がパーヴォ・ヤルヴィと来れば、これを聴かないわけにはいかない。その演奏はと言うと、うっとり、の一言。ゴーテ…
シベリウスを聴くことは、様々な思いを自分の中に巡らせることでもあり。久しぶりに聴いた感のあるパーヴォ・ヤルヴィのシベリウス。5番で。改めて聴き直してみると、ここにあるのは実在感のあるシベリウスであるとの思いを抱いた。それは人間の息吹が確かに…
丸みを帯びたシュミットのスコアリングと、パーヴォ・ヤルヴィ率いるフランクフルト放送管弦楽団による柔らかな音作りとの融和が、曲が持つ滑らかさを際立たせている。まるで連綿と紡がれてきたクラシック音楽と言う、穏やかなる歴史の集大成であるかのよう…
人が人として死を迎える様とは如何様なものであるか。そのようなことを漠然と考える機会が増えてきた。幸いなことに私の両親は共に健在であるが、既に老人の域には入っている。その人生は決して楽なものではなかったろうに、今は働きながらの老後、まさに今…
この前に聴いていたMr.Childrenのアルバムラストトラックが「Over」だったわけだけれども、それを何とはなしにじっくりと聴き入っていたら、急にKANの存在が頭の中に降りてきたのでこれを再生。改めて、強力なポップであることよ、と。ザ・メガポップ。この…
中島みゆき楽曲が持つ毒。それは劇薬としての毒でもあり、良薬としての毒でもあり。それらが中島みゆきの手を離れ、カヴァーされることによって、毒はトリートメントされ、楽曲の持つ本性が現われることがある。一方でカヴァーをしたシンガーが毒に侵され、…