(自分の中では)言わずと知れた高田みち子の1st。
このアルバムがリリースされた頃の音楽業界の風潮による恥ずかしさと言いますか何と言いますか、「日本のノラ・ジョーンズ」などと、外野から見ると非常に恥ずかしい称号を与えられてしまったことは、この方にとっての大きな損になってしまったはず。
ノラ・ジョーンズのようなタイプのジャズシンガーとは大きく異なり、ポップスのテイストを多分に含んだソングライティングを、手練れのミュージシャンが綺麗かつ見事にラッピングしたことで、極上の大人向けポップボーカルアルバムに仕上げられている。
「無人島アルバム」と言うほど自分にとって大げさな作品ではないけれども、手元にあることで、ふとした時に生まれる音楽の隙間を埋めてくれるポジションにある。
この音楽の隙間と言うのは、高田みち子のボーカルスタイルにも言えることかもしれない。
ありそうでなかなか存在しない、聴き手に寄り添いながらも大衆性を保った、甘さ、切なさ、しなやかさ、そして強さを持つ、ある種における稀有なボーカリストではなかったかと。
曲が持つ「場面」を描画することに長けているボーカリストだったとも。
残念なことにSONYから3枚のアルバムをリリースした後に、CDリリースからは完全に手を引いてしまった。いや、引かざるを得なかったのかもしれない。商業音楽の世界とはげに厳しいものであり。
このシンガーの行く先をもっともっと見ていたかったなぁ…。