音波の薄皮 -picked-

『音波の薄皮』ピックアップ since1998 (不定期更新)

シューマン&グリーグ:ピアノ協奏曲 / クリスチャン・ツィメルマン, カラヤン, ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (1982)

ダイナミクスの対比が明確に描き出され、ピアノの繊細さや力強さ、そして同様にオーケストラのそれが克明に現わされている。

曲の表情の変化が非常に分かりやすい、そう言う意味での見通しの良さに優れた演奏。

この録音時、ツィメルマンは25歳。カラヤンとの年齢を対比させたとしても、渡り合うのではなく融合することに専念した指揮者の選択は誤っていない。

ピアノを楽曲の中の主役として引き立たせながらも、オーケストラが単なる劇伴には決してならない、その引き方と主張との対比も見事。

もちろんツィメルマンの演奏も、主義主張で弾くのではなく、楽曲の意味するところを意識しながらなされているように感じられる。

大人しくもなく、若さゆえの主張も抑え、演奏することに専念しているツィメルマンの真摯な演奏を堪能することが出来た。

全てが美しさと生命力に満ちあふれている、そのような演奏。素敵です。