音波の薄皮 -picked-

『音波の薄皮』ピックアップ since1998 (不定期更新)

Belie / 中森明菜 (2016)

何か面白いカバー音源が手元にないものかとふと思い出したのがこの作品。2017年を最後に全く耳を通していなかった。ログを見ると、相当好んで聴いていたことが分かるのだけれども。改めて聴いてみると、どの楽曲も中森明菜節へと完全なる換骨奪胎に成功して…

Live "Compass" for the Future / Saigenji (2020)

それにしてもこの最小限の編成でこの熱量の高さ。熱いワールドワイドなグルーヴの中に、日本人としての端正さがスパイスとして一緒に煮立てられ、混沌となる手前で、バンドとして高いレベルで演奏を繰り出す。これが盛り上がらないはずがない。日本人には日…

youth(青春) / bloodthirsty butchers (2013)

「うわぁ」と心がスタックして、思わず呆けながら聴いてしまった。どうやらこの作品を4年ほど放置していたらしい。その気持ちは分からないこともない。吉村秀樹を亡くして数年。もうその存在に頼らなくてもよい日々がやってきていると思っていたのだから。何…

風夢 / 斉藤由貴 (1987)

今でも斉藤由貴のこの時期の作品を愛してやまないのには理由があります。何よりもこのボーカルが作り出す透明度の高い世界観。そして歌詞の世界にも繰り広げられる、媚びない少女性。この二点を自分は高く評価…いや、愛しているのです。とは言え斉藤由貴も人…

Pick Me Up Off The Floor / Norah Jones (2020)

一応それなりに全てのアルバムを追いかけてはいたのです。ノラ・ジョーンズ。ところが、枚数を重ねるごとに、その制作プランの意味合いが見えづらくなり、向かう先がわからない、何をどう表現したいのかが見えてこない、と言った状態が続いておりました。今…

GoGo Penguin / GoGo Penguin (2020)

以前、Apple Musicか何かで過去作を少し聴いた時にはそれほど印象に残らなかったのだけれども、何気なしに今作をAmazon Music HDで試聴してみたところ、第一印象でヤラれたので即買い。HDtracksにて。ピアノ、ベース、ドラムのシンプルな構成ながら、幻想的…

Shangri-La / Mark Knopfler (2004)

人生、かくも苦いものかと、この歳になって今と言う時間と自分とを対比させ、省みることがある。マーク・ノップラーのこの歌声とギターとが、その気持ちに拍車をかける。時間は容赦なく自分の傍らを通り過ぎ、社会情勢も刻一刻と変わっていく。自分も何も変…

シューマン&グリーグ:ピアノ協奏曲 / クリスチャン・ツィメルマン, カラヤン, ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (1982)

ダイナミクスの対比が明確に描き出され、ピアノの繊細さや力強さ、そして同様にオーケストラのそれが克明に現わされている。曲の表情の変化が非常に分かりやすい、そう言う意味での見通しの良さに優れた演奏。この録音時、ツィメルマンは25歳。カラヤンとの…

LOVE IS THE MESSAGE / MISIA (2000)

MISIAオリジナル2ndアルバム。いきなりのジャンプ作。MISIAのボーカルが縦横無尽に楽曲の中を走り回る。疾走感が凄まじい。1stで感じられた「可能性」が一気に着火した。あれは可能性ではなく「可燃性」だったのだな、と一人納得する次第。しなやかな爆発力…

31 / DIMENSION (2020)

ギターとサックスの2人体制となったDIMENSION。さて、どんなサウンドが飛び出してくるのかなと思いきや、これまたストレートなポップフュージョン。分かりやすい!爽やかさど真ん中のサウンドは、日本のフュージョン全盛期に活躍したメジャーバンドのメロデ…

「阿久悠 作品集」/ ピンク・レディー (2020)

すごい…。全体的な音質の素晴らしさもさることながら、都倉俊一のアレンジ力の凄まじさがクッキリと浮き上がるリマスタ&SACD化に感動。ピンク・レディーに対しては曲のコミカルなイメージが先行し、それほど熱心には聴いてこなかった事実があるのだけれども…

TSUGARU / 上妻宏光 (2020)

一巡して、古典楽曲がやはり面白い。聴いていてその人なりの色が出てきやすいこともあるし、その楽器のために作られ、練られてきた楽曲であるからこそ、古典ならではのワビサビが明確になりやすいこともあるかもしれない。上妻宏光の本作も津軽三味線一本で…

パンドラの小箱 / 岩崎宏美 (1978)

筒美京平全盛期の凄みを感じさせる1枚。これは本当に「凄み」としか言いようがないですよ。特にアレンジメントにおいてはある時期から完全に手を引いているので、ここで聴ける実験性が高く、それでいて今ではなかなかこういったチャレンジをするアレンジはな…

ペイパードライヴァーズミュージック / キリンジ (1998)

タワレコからシティ・ポップのオススメメールが来ていたので、文章で引っかかったアルバムを聴いてみたのだけれども、トラックは成熟していても、ボーカルがあまりにも「歌えるから歌ってみた」と言った感で、味も素っ気もなく、トータルとしてどうにもこう…

VERTIGO~ラモー/ロワイエ:クラヴサン作品集 / ジャン・ロンドー (2016)

ジャン・ロンドー。ドラマティックなチェンバロの演奏。聴き始めたら最後、聴き手の耳を捉えて離さない。時に激しく、時に美しく。チェンバロという楽器がこれほどまでに色彩をたくわえた楽器であったかと、新発見の連続。ここで聴くことの出来る演奏は、正…

ひとかけらの夏 / 村田和人 (1983)

山下達郎の傑作『FOR YOU』に対して、『裏・FOR YOU』とも称される本作。本家と決定的に異なるのは、この作品は、通して歌の対象となる女性が存在している点。基本的にラヴソングが多数を占めていることに気がついた次第。女性の存在を通して、大人が振り返…

シベリウス:交響曲第5番&第7番 / コリン・デイヴィス, ボストン交響楽団 (1975)

コリン・デイヴィスのシベリウスはLSOとの演奏を2組持っていたが、それらからは何か深い感銘を受けることもなく、そこには淡々としたシベリウスが紡がれていると言う印象でこれまでずっと来ていた。そのことから、コリン・デイヴィスはシベリウスにおいて自…

マホガニーのカウンター / フランク永井 (1983)

フランク永井とシティ・ポップの組み合わせ?「うへぇ。そんなもの、想像したくもない」と思って、しばし聴かず嫌いで放置してました。が、聴く物もなくなったので聴きました。ぶっ飛んだ。かっこいい。フランク永井の甘い低音ボーカルに、シティ・ポップマ…

昭和歌謡を唄う / 平山みき (2019)

はすっぱなボーカリゼーションである平山みきが昭和歌謡。もちろん昭和歌謡のリアルタイムな方ですから、それなりに歌うんでしょう?と思いながら聴き始めて、すぐにシャッポを脱いだ。いいです、これ。どこか気怠くも投げやりで、それでも芯がしっかりと通…

優歌 ~そばにいるうた、よりそううた / 幸田浩子 (2017)

ソプラノ歌手による邦楽カバーアルバム。聴き始めた瞬間に身体に衝撃が走りましたよ。クラシカルに歌われる日本の素晴らしいポップスの数々。このようにして歌われることで、曲に新しい息吹が吹き込まれていく。それを目の当たりにしているかのように聴き進…

宮本、独歩。 / 宮本浩次 (2020)

コロナ騒動に乗じていること自覚していないとしか思えないメッセージが自分宛に届く。このご時世に、少しでも自分の心の平静を保ちたいと願っているのに、それでもノイズは土足で自分の心に入り込む。踏みにじる。独歩。宮本浩次はそう表現した。アフターコ…

夜を往け / 中島みゆき (1990)

よりドラマティックに、より人間味深く。歌うアクトレスとしての中島みゆきに一層の磨きがかかる、いや、それがとどまるところを知らない快進撃の連続。瀬尾一三とのコンビも3作目にして、今の中島みゆきに繋がる線が出来上がったことがよく分かる。デビュー…

井上陽水トリビュート / V.A. (2019)

あの井上陽水の世界観と、作り上げられたトラックの印象強さを、自分の音楽として消化するためのアイディアを全員で競い合っているかのようなトリビュート盤。各々が各楽曲を自分のフィールドに持ってきているアーティストばかりで、聴きごたえ十分。アイデ…

SINGularity / 西川貴教 (2019)

本作は西川貴教流ハードボイルドを突き詰めた作品。三枚目を演じることがT.M.Revolutionに課せられてしまったスティグマであるならば、ソロとしての作品はそれすらも自分の武器として、切った刀でどこまでハードボイルドを演じ返すことができるかと言うチャ…

今日だけの音楽 / 坂本真綾 (2019)

菅野よう子の懐から飛び出してから、果敢に楽曲に挑み続けていた坂本真綾が、ここに来て楽曲との共存を図ることに成功したと思われる1枚。個性の強い楽曲たちに対して、坂本真綾が柔軟に溶け込んでいるのだよね。楽曲毎の演じ分け方、切り替えがスムーズで、…

労働なんかしないで 光合成だけで生きたい / スガシカオ (2019)

スガシカオ独自の「情けなさ」を描くことに安定感が戻ってきた1枚。歳を重ねるごとにその情けなさの描画は研ぎ澄まされ、その鋭さはトラックのシャープさにも反映されている。スガシカオだからこそ作り上げることのできる、その後ろめたさあふれる心技体の完…

Covers / 清春 (2019)

自分がカバーアルバムを高く評価する際の基準は、次の2点。換骨奪胎を施しながらも原曲のおいしいところを引き出しているカバーか、原曲に忠実でありながらもそのシンガーならではの歌への愛情が感じられるカバー。清春のこれは圧倒的前者。トラックの音数を…

GUNDAM SONG COVERS / 森口博子 (2019)

ガンダムシリーズに使われた楽曲から投票で選ばれた上位10曲をカバーする企画。聴く前は「企画物に当たりなし」などと思っていたのだけれども、それは見事に覆されましたよ。これが実に聴かせる。森口博子の歌唱力は元々認めてはいたけれども、そこに透明感…

CHEMISTRY / CHEMISTRY (2019)

Chemistry原点回帰の1枚。「今さらChemistry?」と思う向きもあるかもしれない。そう言った方々に是非とも聴いて頂きたい1枚。「あ、Chemistryだ」と実感出来るはず。声を聴けば「ああ、この二人ならではだな」とすぐに納得出来るボーカリゼーションと、この…

濡れゆく私小説 / indigo la End (2019)

川谷絵音はゲスの極み乙女。でのそれよりも、絶対にこのバンドでの活動の方が、センチメンタリズムの側面で遙かに切ないものを引き出せる人なのだよね。詞の世界もメロディの切なさも、バンドとしてのアレンジメントのアイディアも、このバンドがやりたくて…