音波の薄皮 -picked-

『音波の薄皮』ピックアップ since1998 (不定期更新)

Blank Envelope / Nulbarich (2019)

とてもお洒落な音作りをしている反面、メロディはウェットなのだよね。日本人的なウェットさ。それはメロディがしっかりと存在しているという意味でもあり。だからどこか切なく音が耳に届く。瀟洒な表面上の音に騙されると、そこで消費されて終わってしまう…

ヤン・アントニーン・ロジー:黄金の音符 / ヤコブ・リンドベルイ (2019)

リュートの名手、ヤコブ・リンドベルイによる、17世紀~18世紀にかけての作曲家ヤン・アントニーン・ロジーによる楽曲集。バロックの中にもモダンな旋律が時折見え隠れするところに、時代だけに拘束されなかったこの作曲者の視点が浮かび上がるような演奏。…

Christmas: A Season Of Love / Idina Menzel (2019)

何気なくAmazon Music HDでクリスマスソングのプレイリストを流してみたら、マライア・キャリーの次に流れていたのが、このシンガーの楽曲。一発で心を鷲づかみにされた。「なんじゃこりゃ!」と。その歌の上手さと、アレンジのゴージャスさは1曲で十分に伝…

infinite synthesis 5 / fripSide (2019)

「先祖返り」。それが第一印象。『infinite synthesis』シリーズの1stに存在していたメロディ重視の要素が戻ってきた感あり。そして思い切った音数減らし。八木沼悟志のトラック数を重ねた派手な音作りが、今作では意図的なのかどうなのか影を潜めて、歌を表…

METAL GALAXY -JAPAN Complete Edition- / BABYMETAL (2019)

数回聴いてやっと合点が行った。今作はダンスを土台に、メタルなサウンドを乗せた意欲作なのだな。確かにメタルばかりし続けていても飽きが来るし、ダンスによって可愛さを表現するのは今のうちだと言う算段もあったのだろう。コアなメタルを期待すると、い…

見っけ / スピッツ (2019)

もう大御所の中の大御所であるはずなのに、この新鮮さはどこからやって来るのだろうか。CDを入手し、改めてじっくりと聴き進めていくと、出だしからその新鮮さの応酬でどこまでも若々しさに満ちているのを実感させられる。最早中年になってしまった自分から…

COMPLETE SOLO PIANO WORKS I / 和泉宏隆 (2019)

タイトル通り、和泉宏隆(ex.T-SQUARE)のソロピアノ作品集。これまでの和泉さんのピアノアルバムは比較的ストイックな演奏で聴かせるイメージがあったのだけれども、今回は結構饒舌に歌ってます。「あら、そこまで弾き倒しちゃうのね」と言った印象。確かに…

Melody go round / 安藤まさひろ (1990)

T-SQUAREリーダ、安藤まさひろの1990年発売ソロ作。これもリアルタイムで聴いていた作品。音源を散逸してしまったので、再購入。BSCD2になっておりました。今聴いてみると、T-SQUAREの音楽を、T-SQUAREとは若干異なった光の当て方をしたような作品。伊東たけ…

THRU TRAFFIC / 東北新幹線 (1982)

究極にお洒落。これは大人の音楽のど真ん中を行く作品ですよ。前々からその存在は気になってはいたのだけれども、国分友里恵を聴いてから、なんとなくこの手の80年代シティ・ポップ~A.O.R.路線がぐっと自分に近づいてきた感じがしておりまして。で、聴いて…

Relief 72 hours / 国分友里恵 (1983)

何気なくザッピングしていたのですよ。田中裕梨のアルバムに収録されていた曲と原曲とを。そこで何気なく「スノッブな夜へ」の原曲を知らなかったと思い、Apple Musicで調べてみるとあっさりと出てきたのです。原曲もこれまた非常にグルーヴィー。これは面白…

SINGER5 / 島津亜矢 (2018)

現時点でのカバーアルバム最新作。今年9月に6作目のリリースが予定されております。5枚連続でフルに聴いてしまいましたよ。しかし、声の引き出しを一体いくつ持ってるんだろうか、この人は。それでいて器用貧乏に陥らない。しっかりと歌手として歌を届けてい…

おはこ / 柴田淳 (2019)

カバーアルバムとしては前作にあたる『COVER 70's』からの延長線上にある、「原曲のアレンジ重視」をさらに突き詰めて、より原曲からのボーカル部分のみの換骨奪胎を目指した作品になっており、その目論見はしっかりと成功していると感じられる。しばじゅん…

グレープフルーツ / 坂本真綾 (1997)

坂本真綾、デビューアルバム。当時17歳前後だと記憶してます。ジャケットの写真があどけないと言いますか実に子どもだな。アルバムの中身はと言いますと、これがまぁ、またとても良いのです。まだまだ知る人ぞ知る存在だった菅野よう子とデビュー作からタッ…

微吟 / ちあきなおみ (2019)

「喝采」しかまともに聴いたことがなかったちあきなおみを真剣に聴いてみようと接収。そしてすっかり度肝を抜かれた自分がここにおります。なに、この圧倒的な表現力。特にアルバム中盤のライヴ音源3曲が白眉。こんなものを目の前で見たら、きっと数日口がき…

ブルックナー:交響曲第8番 / ギュンター・ヴァント, ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (2001)

超大作、ブルックナーの8番を。一楽章ごとにじっくりと腰を据えて聴く。確かに明確なメロディはない。果てなく広い湖の淵に立ち、風がいたずらする波を眺めているかのような感覚。それは場面転換と楽器の構成で作り上げられる幻想のようなものであり、それで…

中島みゆき作品コンプリート / 研ナオコ (2014)

研ナオコによる中島みゆき提供楽曲&カバー集。初期の中島みゆきは独自の恨歌に特徴があるわけだけど、それを本人が歌うことによって、救いようのない独自の世界観が繰り広げられる。それを「歌手」である研ナオコのフィルターを通すことで、中島みゆき流の…

春なのに / 柏原芳恵 (1983)

表題の大ヒット曲を含めた全10曲、オール中島みゆき作品。一説によると、発売当時にこのアルバムが全曲中島みゆき作品であることはあまりプッシュされなかったという。アイドルがアーティスト路線に寄りかかる事が潔しとされなかった時代なのかなんなのか、…

POP VIRUS / 星野源 (2018)

すごいすごい、とは思っていたが、何がすごいのかその理由がようやく見えてきましたよ。ポップスとして「楽曲に飽きてしまう」手前で、曲を惜しむことなくスパンと終わらせるのだよね。下手に、そして迂闊に、楽曲を長引かせることをしていない。2コーラス目…

アワー・コネクション / いしだあゆみ&ティン・パン・アレイ・ファミリー (1977)

お洒落だよね。いしだあゆみがここまでモダンな歌手だとは思わなかったと、入手当時に驚いた作品。時に気怠く、時にチャーミングに。「ああ、役者だなぁ」と思ったね、これ。その印象は今聴いてみても何も変わらない。素敵な作品。音楽面でも船頭多くして何…

WASABI / WASABI (2012)

吉田兄弟の兄、吉田良一郎を中心とした和楽器ユニット。津軽三味線、尺八、箏、そして太鼓という和カルテットによる雅な世界。たったこれだけの編成で構成される、この音の隙間が何とも言えず心地よいのだよね。鹿威しが音を立てるが如く、静寂に響くかのよ…

見る前に飛べ! / 鈴木みのり (2018)

いや、その、入手してからなんとなくしばらく放置してたんですよ。そして、今、埋もれていたのが目についたので何気なく聴いてみたんですよ。そうしたらですね、つかみの1曲目からいきなり持って行かれました。あまりにもぶっ飛んだその曲調と詞に「なんじゃ…

AREA / DEZOLVE (2019)

しかし壮大な作品ですな。楽曲の持つスケールが大きい。そこが大御所や中堅どころの邦楽フュージョンバンドとは大きく異なるところで。楽曲として無難な路線や、小さくまとまったり、もしくは規模を大きく見せようとして複雑怪奇になったりしない。それは作…

CITY LIGHTS 2nd Season / 田中裕梨 (2019)

AppleMusicのオススメプレイリストから、聞いたことのないアーティスト名をクリック。そうしましたら、あなた、こんな音源に遭遇しましたよ。どうもその筋では有名なシンガーのようで、このアルバムは本コンセプトの第2弾アルバムとのこと。中身はと言うと、…

Sunshine Rock / Bob Mould (2019)

キタコレ!コレキタ!シュリンクに貼ってあった「A CELEBRATION OF POWER OF ROCK AND ROLL」の謳い文句に煽られて、期待十分で聴いてみると、本当にこれまた12曲ノンストップで突っ走るパワーロックの嵐。吹き荒れる嵐。迷いも回り道も、全て飛び越してとに…

THANX!!!!!!! Neo Best of DA PUMP / DA PUMP (2018)

これですよこれ。17年ぶりのベスト盤が、まさかボーカルリテイクのベスト盤になろうとは、誰も想像出来なかったことであり。いかに「U.S.A.」が今年大旋風を巻き起こしたかがよく分かる結果に。AppleMusicで聴いていた段階で「相当にリミックスとリマスタか…

free soul Suga Shikao / スガシカオ (2018)

free soulシリーズでスガシカオのコンピが組まれるということで、いてもたってもいられなくなり、速攻で予約していた2枚組。到着してもう2度ほど聴いた。聴けば聴くほどに「スガシカオにしか作れない楽曲」をよくもまぁ、見事にキレイに並べたものだと感心。…

プライニクル / 柴田淳 (2018)

濃いなぁ…。濃厚な柴田淳が味わえる一作。それは昏さという表現に置き換えることも出来るかもしれない。女性的な昏さを味わえるシンガーには、宇多田ヒカルや鬼束ちひろが挙げられるが、柴田淳も相当に昏いものがある。それでも柴田淳の場合は、自分の内部ま…

HEART STATION / 宇多田ヒカル (2008)

ポップメイカーとしての宇多田ヒカルが開花した、今から俯瞰するとある意味特殊な1枚。それはメロディの明快さを伴うものなのだけれども、トラックメイカーとしての宇多田ヒカルもしっかりと地に足をつけて出来上がった作品だと思うのだよね。この後、人間活…

超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~ / いきものがかり (2016)

朝、何気なくいきものがかりを選んでシャワーを浴びる。その最中にふと「あれ?もしかして吉岡聖恵って、エモいかも?」とふと思ったのがそもそもの間違いだった。その時点では、何か妙に歌詞が耳に入り込む感覚が強く「これは一体なんなんだろうか?」と検…

Future Pop / Perfume (2018)

ブレイク直後2枚あたりのJ-POPならではのワビサビと言った要素は大きく後退したものの、エレクトロにおけるメガポップスと言う観点で行くと、大きく前進した作品。Perfumeと言う素材をどのようにすれば、時代から脱落させずに進行させ続けることが出来るかと…